半導体専門家と企業の業務マッチングサービスサイト
トップに戻る | セミリンクス | クライアント | プロジェクト | エキスパート | サイトマップ | パートナー | お問合せ | 利用規約
<<前へ 次へ>>
   第2回 ユ ネ ス コ 運 動 と 私
 

戦争は日に日に熾烈さを増し、戦況は悪化の一途を辿り我が国の敗色漸く濃厚になった昭和19年12月、私は福岡市西部第46部隊に現役兵として入隊を命ぜられました。この年から徴兵検査は1年繰上となり、本来昭和20年に検査を受ける年齢の私達も1年上級の人たちと一緒に受けることになりました。またその前年には学徒動員が始まり、それまで徴兵を猶予されていた大学生も否応なしに入隊することになり、神宮外苑では盛大な壮行会が催されたと記憶しています。

 大濠公園も今は福岡市民の安らぎの場所として有名ですが、入隊早々駆足で何周も走らされた処です。入隊後1週間して配属されるべき海南島純兵団の一員として、勇躍下関より関釜連絡船の金剛丸で朝鮮半島経由で上海までの旅に出発しました。昭和19年12月末は寒さがことのほか厳しく、玄海灘は大時化の為船は木の葉のように揺れ船酔いをしなかったのは私を含めて中隊で僅かに3名という惨惨たる状況でした。

 釜山に上陸して貰った一個の林檎の冷たく美味しかったことを、56年経った今日でも12月になると思い出します。満州国錦州付近の車内で昭和20年の元旦を迎え、山海関を通過し粤漢線で南京に到着、ここまでは客車でしたが、南京上海間は貨物扱いで有蓋貨車に詰め込まれ、上海へ着いた時は飢えと寒さでへとへとの状態でした。
  上海の通過部隊基地では訓練に明け暮れ、船便を待つことになりました。基地での訓練は相当に厳しく、軍靴で殴られる兵がいたり帯革で打たれたり、それはそれは厳しいものでした。幸か不幸か私は幹部候補生ということもあり、余り叩かれずに済みました。戦況は次第に我が軍に不利になり、船便での海南島へ移動ができず、中支派遣軍独立大隊震雷部隊へ転属となり、長江(揚子江)北岸東支那海沿岸の馬塘鎮(まとうちん)へ駐屯し警備に当ることになりました。この間も初年兵としての訓練の下、一期・二期の検閲を受け、警備にあたりました。
  この地域は中国共産党軍の支配下にあり、戦闘の相手は共産軍の部隊でありました。終戦直前の8月上旬のある日、敵が待ち伏せているとの情報があり、直ちに討伐に出発しましたが、案の定敵の待ち伏せにあい激しい戦闘となりました。迫撃砲は敵の肉薄攻撃を受け、私達も最早これまでと突撃を敢行しました。その勢いに押されて敵は退却をし、戦闘は終了しました。突入の際に軽機関銃の弾薬手である戦友Mに声をかけましたが、返事がないのでその儘突撃をしました。
  戦闘が終了して引き返して見ると彼は全く動きません。彼は戦闘が始まって間もなく敵弾に当り名誉の戦死をしていたのです。戦闘の最中は気が立っているので、何も怖いものはなく張りつめていたのですが、戦闘が終わり彼の戦死が判明すると如何ともし難い寂寥感に襲われました。彼は所謂志願兵でありました。当時は18歳になると現役兵に志願ができたのです。後で聞いた話ですが、彼は天草出身で農家の一人息子であったそうです。ご両親の嘆きは如何ばかりだったろうと今だに8月になると無情の感で一杯です。
このことは私の戦後の世界観におおきな指針を与えてくれました。後にユネスコ運動に公職で担当することになったのも因縁と思っています。ユネスコとは、「国際連合教育科学文科機関」の英語の頭文字を取った、国際連合の専門機関のことですが、そのユネスコ憲章の前文に「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない。」とあります。そしてまた「相互の風習と生活を知らないことは、人類の歴史を通じて世界の諸人民の間に疑惑と不信をおこした共通の原因であり、この疑惑と不信のためにしばしば戦闘となった。」とあります。私はこのユネスコの理念に感動して半生をこの運動に努力してきました。個人の努力は小さくとも精一杯行うことが大切だということを実感しています。また、何事によらず自分がそのことに打ち込んできたことが高齢者となった今日でも、皆さんとの交流が出来ている幸を、沁々と味わっている次第です。

ユネスコ関連サイト
 日本ユネスコ協会連盟 http://www.unesco.or.jp/index1.htm
 世界遺産 http://www.unesco.or.jp/sekaiisan/history.htm
 ユネスコ憲章 http://www.unesco.or.jp/kensyo.htm
   (全文) http://web.infoweb.ne.jp/meguro-unesco/charter.html
   (英文) http://web.infoweb.ne.jp/meguro-unesco/charter_e.html
 ユネスコホームページ http://mirror-japan.unesco.org/

 
Back to Homepage | Semi links | Clients | Projects | Experts |  PR  | Partnership | Help | Copyright Policy
Copyright (C) 2000-2006 Semiconbrain.Inc.All Rights Reserved,